夜間飛行

丸をください

午前3時のミツコ

3月の出来事なのにもう5月ほったらかした下書き供養(心の短歌)

 

友達がわたしの二十歳の誕生日を祝ってくれました。人生初のアフタヌーンティーをして、デパートで香水を買って、焼き肉を食べて、深夜の渋谷でカラオケをしました。アフタヌーンティーはどんな格好で行けばいいのか分からず、服選びに大変難儀しました。あとからナントカカジュアルとかいうドレスコードの存在を知り、アフタヌーンティーって怖ぇぇとなっております。

 

この度、憧れの香水であるゲランのミツコを手に入れました。

 

ちょっと香水に詳しいような方がこのブログの読者の中にいらっしゃるようならば、ブログタイトルの「夜間飛行」(Vol de Nuit)がゲランの名香であることはすぐお気づきになるかと存じます。さらにURLにはそのものずばりmitukoと入っています。ミツコの正式なつづりはmitsoukoですが、一応ミツコです。ブログタイトルやURLに使うほど憧れ、もう何年も何年も恋焦がれてきた香水なのです。この世に誕生して100年、世間ではマダム向けと言われているものなので、いつか、かっこいい大人になったら、ふさわしい女になったらミツコを買おう、と思っていたので、まさか二十歳で買うことになるとは思ってもみなかったことです。

 

予算内で好きなものをお誕生日プレゼントとして買ってもらう、という話だったのです。いざ好きなものを選んでいいよ!と言われると何が欲しいのかよくわからなくなってしまうものです。これをわたしはよくやります。お夕飯はあなたが食べたいものにしよう、と言われると何が食べたいのかわからなくなります。相手が気乗りしないものを選ぶのも嫌です。ご飯だったら相手の嗜好に合わせれば済みますが、今回はわたしの意思がないと何も始まりません。

 

何が欲しいのか全然わからないままイセタンミラーをさまよい、京王百貨店をさまよいました。おろしたてのハイヒールが容赦なくわたしの内反小趾を痛めつけます。実は外反母趾と内反小趾持ちな上に偏平足です。まだ足が成長しきっていないうちからきついローファーで長い時間歩いて通学していたからでしょうか。なんだかソフト纏足のようです。「ソフト纏足」、ソフトSMみたいな語感になってしまっていささか困惑しています。一応清楚系・清純派という体で生きているつもりなのでこのようなワードセンスはやめておきましょう。つい最近もそのセンスをもっと別のところで生かしてくれと怒られました。

 

アイシャドウも今はそんなにいらないです。リップも先日Qoo10で注文しました。ハイブランドのマニキュアなんて在ってももったいなくて一生使えません。困りました。本当はすごくうれしくて仕方がないイベントなのですが、びっくりする位ほしいものが見つからないのです。散々Diorのアイシャドウが!シャネルのリップが!と大騒ぎしているくせに、どういうつもりなのでしょう。モノにあふれた時代に生きる人間らしいですね。

 

その時ふと目に入ったのがゲランのカウンターでした。ゲランは高いのでそもそも範疇外でしたが、ちょっと見てみよう、という軽い気持ちでいってみることにしました。ミツコも夜間飛行もシャリマーもジッキ―も、大人の女性がつけるものだと、小娘には似合わないだろうと決めてかかっていたので最近出た今っぽい軽くて甘くてさわやかなものを見せてもらいます。ばらの香りが気になります。ちょうど友達の美形ボーイが女物のばらの香水をとても上手につけるのをうらやましく思っていたところでした。

 

しかし、憧れの香水の引力には抗えません。一度その香りを知ってしまったらもう諦められません。でも年が…とか他人受けとか…とかほんとはミツコが欲しくて仕方がないくせにあーだこーだ言ってるわたしの背中をしっかり押してくれる友達が頼もしい。

 

ミツコはオードトワレでも結構強いのだけれど、嫌みじゃない強さです。深呼吸して嗅ぎたい。慎ましいけど強い意志がある女の匂い。現代だとそこに独自の世界観がある女、という属性が付加されそう。クラシカルであるが故に現代日本ではかなり個性的な印象を持ちます。

 

ミスディオールブルーミングブーケとかエクラドゥアルページュとかホワイトリリーとかクロエとかそのあたりの人気の香水とはかなりかけ離れたクラシカルな香り。わたしの香水の原点は母がくれたミニチュアのレールデュタンなのでこの系統の香りは好きなのですが、おばさんっぽいと思う方も一定数いると思われます。というか香水の流行りって残酷。ちょっと前まで友達の誕プレにはこれ!みたいな感じで推されてたホワイトリリーがネットでトイレの芳香剤とか流行おくれとか言われてていやなきもちになった。失礼すぎる。わたしは流行りの香水はあまりつけたくない主義だけど、これは失礼すぎると思う。

 

早速その日の夜にミツコをつけました。首筋にひと吹き。日付が変わってからセンター街に向かいます。まん防だけど思ってたよりも人がいる。渋谷のカラオケ館は平日の夜のフリータイムは学生で千円ちょいくらいでした。驚きの安さ。カラ館を出た午前3時の、ぎりぎり夜の冷たい風に漂うミツコ、一生つけていきたい。

 

(余談)

本当に幸運だなと思うのは憧れの香水が嫌いな匂いではなかったということです。実はわたしにはもうひとつ憧れの香水がありました。ポスターの山口小夜子がうるわしい資生堂の「禅」。ポスターの雰囲気や「禅」という名前から、きっと沈香のような深みのある落ち着いた香りなのだろうと若干17歳のわたしは勝手に想像を膨らませておりました。しかし、わくわくしながら実際にかいでみたら強い刺激が鼻につきささり、こんなんじゃない!とちょっと悲しい気持ちになったことを覚えています。たしか禅はミツコと同じシプレ系の香りだったはずなので、今だったら違う感じ方をするのかもしれませんが…

 

(余談②)

この記事を下書きにしたまま寝かせておいた間に禅をかぐ機会がありました。地元のイオンのカウンターにひっそりと「琴」「ばら園」の間に並んでいました。改めて試してみると、確かに鼻に強めに来ますが、数年前の記憶よりもいい匂いな感じがします。年をとった。

 

(余談③)

わたしは在りし日の資生堂の広告が大好き。山口小夜子のシリーズも、真行寺君枝の「ゆれるまなざし」も大好き。少女時代の宮沢りえの「遠野物語」も素敵。全部YouTubeで観れるから資生堂ジャポネスクを皆様もご覧になってください。これらを作った資生堂広告部に入りたいと思っていましたが、すでに広告部はなくなっていました。ちなみにノエビアのCMもおすすめです。


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