夜間飛行

丸をください

東京にはイオンモールがないんだってね

おひさしぶりです。あまりにも更新をしないものだから「もうブログは更新しないのか」というお問い合わせを賜りました。いつもわたしの駄文にお付き合いいただきありがとうございます。

 

わたしの幼少期、というか小学生ごろまでの週末の過ごし方と言えば家族でイオンモールに行って買い物したりご飯を食べることだった。小学校低学年まで茨城県の北部に住んでたのだが、わざわざ車で一時間くらいかけてイオンモール内原、という大きなイオンモールに出かけていた。当時はまだ「ジャスコ」と呼んでいた気がする。いつからジャスコがイオンに変わったのかわたしの知ったことではないのだが、当時わたしの家では内原ジャスコ、ウチジャスと呼んでいた。イオンモール内原は常磐自動車道から見える。平坦な土地に突如建っている。大きい建物にはそれに負けないくらい大きな立体駐車場が付いている。常磐自動車道をご利用の際は茨城県民のオアシスをご覧になられるとよい。ゆとりがあれば高速道路を降りて坂東太郎でお食事をなさるとなおよろしい。

 

そこには映画館もゲームセンターも料理教室もなんでもあったのだ。イオンモールでそろわないものはない。まるで東京みたいに!わたしは父にねだって当時女児から絶大な支持を受けていた「オシャレ魔女ラブアンドベリー」というゲームや、「ラブアンドベリー」が終了してからは当時女児と大きなお友達から絶大な人気を誇っていたプリキュアのゲームで遊んでいた。(ちなみにわたしはラブ派だった。ディスコステージの「ミラーボール大作戦」という曲が大好きだったのだが、覚えている元女児はいらっしゃらないだろうか…今でもメロディーを歌える。懐かしい…)大勢の茨城県民が週末には訪れていたのではないかと思う。一日中過ごせる場所だった。「下妻物語」よろしく、茨城県民はイオン、もといジャスコで服を買っている。あの映画を初めて観たときあまりにも茨城県民に刺さる映画過ぎてかえって感動した。わたしは茨城生まれ埼玉育ち、都道府県魅力度ランキングの底辺で生きているので「下妻物語」も「翔んで埼玉」もどちらの内輪ノリも楽しめる。内原ジャスコにはBABY,THE STARS SHINE BRIGHTはもちろん存在しない。

 

小学校中学年になって埼玉に引っ越したのだが、週末の過ごし方はそこまで変わらなかった。車で10分の地元のイオンモールに行き、フードコートでうどんを食べていた。このイオンモールには映画館もないし料理教室もないのだが、イオンモールが自宅から近くなったことに都会に引っ越してきたんだなァと思っていた。それまで住んでいた茨城の町にはそんなショッピングモールはなかったから。ららぽーとIKEAコストコも行ったことがなかった。(この三つは埼玉の新三郷に全部ある)

 

しかし、東京の子にはそんな幼少期はないらしい。この話を生粋の大田区民に話したところ、イオンモールが何たるか、いかになんでも揃う場所であるかをよくわかっていなかった。わたしの思い出も服も靴も食べ物も全部ジャスコが提供してくれたのに。調べたところ大規模なイオンモールは東京23区には板橋にしかないらしい。たしかに渋谷とか新宿にイオンモールがあるはずがない。渋谷にあるべきものは109だとかミヤシタパークだとかヒカリエであり、新宿にあるべきものはルミネエストだとか伊勢丹だとか小田急百貨店である。中学生になってやれ塾だ部活だという生活を送る前はそんな週末を過ごしていたので、イオンモールに行かない週末の過ごし方がよくわからない。いったい東京の子はどんな週末を過ごしていたのか?

 

大学に入ってから行動範囲が広がり、一丁前に新宿のルミネエストで買い物をしたりするようになった。新宿はなんでも揃う街だ。はやりの服も新作のデパコスも買える。おいしいごはんもつい写真におさめたくなるかわいらしいデザートもだ。東宝シネマズもバルト9もある。ニッチな映画を上映するミニシアターもある。ゲームセンターもある。人間の欲望の大半を新宿は受け止めている。その気になれば愛とか絶望すらも買えるのではないかと一瞬思ってしまうほどなんでもある街だ。まるでイオンモールみたいではないか!ついさっき何でもあると言っていた内原ジャスコにないBABYもマルイアネックスに店を構えている。

 

ジャスコにはなんでもある。しかしそれはほかに何もない世界のなんでもあるだったのだ。なんでもある東京になんでも揃うらしいジャスコは存在できないらしい。この記事を書きながら「結局ジャスコにはなんでもあるのかよ、ないのかよ、」と自分でも混乱をきたしている。わたしが育った町ではジャスコになんでもあった。しかし、なんでもある魔都にはなんでもあるはずのジャスコは存在できない、という形でこの混乱はまとめたいと思う。