夜間飛行

丸をください

新幹線でゆこう

この前京都に一人旅をしてきた。京都も新幹線も中学の修学旅行ぶり。お金がないから夜行バスで行くつもりだったけど親に反対されたので身銭を切って新幹線。いや、チケットショップって安いのね。座席指定券付きで12000円なり。自由席でも正規ルートで買うと13000は超える。貧乏学生なのでもっと安く買えるルート知ってる親切な旅人さんいらっしゃったらぜひ教えてください。

 

新幹線っていいね。なんだか日本はまだ滅びないなって思う。

 

実は最近日本滅亡するな、衰退するなってずっと考えていて、勝手に亡国を憂いていたのだ。なんの根拠もなく漠然と。これ言うと心配されるんだけどバブル期のコカ・コーラのCMを見て、日本はもうかつてのように繁栄しない、下り坂だって真夜中に号泣していた。それを見て母親がかなり引いていた。無理もない。

 

日本人礼賛系の番組が苦手。もう戦前のような精神を持ち合わせた「日本人」はいないし、戦後の繁栄を作り上げた「日本人」もいない。今の、2020年に18歳をやっている私はただ過去の繁栄に乗っかっているだけ。生まれたときからモノに取り囲まれていた。

 

いつまでもアジア1の先進国を自称できない。それに気づいていない人が多すぎる。これを平和ボケといっていいのか、過去の栄光にすがっているというのか。今日本人は自分たちの力と世界の様子をよーく考えなおした方がよいのではないのか。極東の小さな島国としてそこそこ幸福に生きていける国として。

 

バブル期のCMで泣いてしまう理由はたぶん、その時代の世相がよく見えるからだ。何にせよ明るい。洗練されている。世界で一番豊かだった日本の姿がしのばれる。世界の最先端だったはず。インターネットなんか、スマホなんかなくても幸福な世界。もちろんCMはフィクションなのは承知している。でも昔のCMは美しいのだ。製作者の美意識がにじみ出ている。

 

明日はもっと豊かになっているという無条件の確かな希望みたいなものを、私たちはどこかに置き忘れてきたのか、はたまた置き去りにせずにはいられなかったのか……もっと言うとそんな希望なんて最初から存在していなかったのか、それとも私が気づいていないだけか……もちろん現在の方がよい方に動いていることや進歩していることは沢山あるだろう。でも未来を一様に信じられる時代は既に終わってしまったとは思う。

 

こんな調子で下り坂なジパングを不安視していたのだが、新幹線に乗りながら案外日本は早晩簡単には滅びないな、と思い直した。静かな車内で熱海や三島の通過アナウンスを聞きながら。(海なし県民は海を見るとわくわくするざんねんな習性がある)

 

東京駅からの始発京都行に乗るには私は3時半に起きないといけない。真っ暗な中ひとり家を出て始発の電車で東京駅を目指す。始発は朝まで飲み明かした酔っ払いがいると聞いていて、渋谷******を大の苦手とする私は怯えていたのだがそのような人は見当たらなくて一安心。暗闇の中をひた走る電車の煌々とした明かりは滅亡した東京から逃れる乗り物みたいでなんだか不思議だった。全然関係ないけど「千と千尋の神隠し」で千が沼の底?駅目指して乗った電車みたいだなって思う。全然関係ないけど。

 

窓から見える日本の夜明けは美しくて静かで、いや、静かなのは新幹線の車内なのだが、無口な力強さを感じたのだ。こうやって国中に朝が来て、人が生きていて、自分は文明の乗り物で静かに旅している。悪くない。ただ時は流れて、日常があって、太陽が昇って…これは割と幸せなことではないか?当たり前だろと言われたら当たり前なのだが、日本が早晩滅びると何故か思い詰めていたいかれた私には新鮮な感動だったのだ。地に足つけた確かな日常こそが希望。そんな気がしたのだ。日本に光あれ。