夜間飛行

丸をください

夜来香

「夜来香」の香水を探しています。「よらいこう」ではなく、「イエライシャン」。山口淑子が「あわれ春風に嘆くうぐいすよ 月に切なくも匂う夜来香」と歌っている、あの夜来香です。この世にはこれが夜来香だといわれているお花が三種類、トンキンカズラ、チューベローズ、イランイラン。一般的にはトンキンカズラのことを指すようです。

 

トンキンカズラは黄色い、夏に咲くお花です。あら、山口淑子は「夜来香」は春に咲く白い花だと歌っています。トンキンカズラもイランイランも黄色い。この歌で歌われている夜来香は、チューベローズのことなんでしょうか。でも、チューベローズは6月に咲くお花。6月を春というにはやや無理がある気がします。

 

とりあえず「夜来香」=チューベローズということにして、手持ちの一番チューベローズがしっかり入ってそうな香水をかいでみます。箱に収まったまま長い眠りについていたガブリエルシャネルエッセンスを引っ張り出してきました。

 

これは去年の5月にわたしの手許に来たきり、もったいなくてほとんど使わずに大事に、大事にしてきた、手持ちの中で唯一のシャネルの香水です。多分、死ぬまで大事に大事にし続ける。好きな人と初めてのデートをするときとか、ここぞというときに使って、3年で1mlくらいずつ減っていく。そして瓶の中身が空っぽになった時、わたしの精神は死に、俗世間にお別れするのだと思います(?)。50ml入っているので、このペースだとあと150年生きねばなりません。もう少し頻繁に使ってもよさそうですね。

 

「エッセンス」は普通のガブリエルの10倍のチューベローズが入っているそうで、両の腕に抱えきれないほどの白いブーケの匂いがします。とってもいい匂いですが、「夜来香」という文字列からわたしがイメージするのとは違う気がします。もっとひそやかで、妖しげで、オリエントの匂いがするはず。チューベローズの花言葉、「危険な関係」が似合う、「上海異人娼館」の咲耶や「若き仕立屋の恋」のホアがつけてそうな匂い。春に咲く想像上の夜来香、後ろ暗さを湛えた東洋のチューベローズの香水を探しに、新宿伊勢丹にでも行きましょうか。つきぬ思い出の花は夜来香。

 

 

夜来香

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