夜間飛行

丸をください

恋は盲目

最果タヒが「恋をした女の子が嫌いだ。どんな悪意もきれいな言葉にできるから」みたいなことを言っていたが、(あやふやなので「惑星の詩」という詩を参照してほしい)これには激しく同意せざるを得ない。あれは去年の5月、5限の必修がはじまる30分前に、なんだかこのチャンスを逃してはいけないような気がして四ツ谷から新宿の紀伊国屋書店に向かい、若干遅刻しながら買ってきた最果タヒの詩集の中で一番刺さった言葉だ。恋している女の子は全部「だって好きなんだもん」の一言で全部正当化できるので、わたしも控えめに申し上げてあまり得意ではない。

 

 

この前の記事でちらっと「ディズニーは下手すると遺恨が残る」という主張をしたのだが、ディズニーと恋をしている女の子は一番遺恨が残る組み合わせである。恋をした女の子の、「彼氏がいちばん!彼ピがだいすき!」みたいな感情をものすごいエネルギーにして周りが見えてないところがあらわになる場所、それがディズニーランドである。ディズニーランドはもちろん何の罪もない。お金と時間がかかる分、恋のエネルギーで他人がなぎ倒される可能性が高い場所なのだと思う。この記事は恋してる女の子とディズニーランドの相乗効果にすっかりあてられた、決してこのような可愛い女の子になれないわたしの遺恨集兼嫉妬集である。醜い。

 

①高1の冬、わたしは5年ぶりに再会する遠方の友人とディズニーランドで遊ぶことになり、現地で落ち合った。久しぶりの再会を喜び合ったのもつかの間、友人が先輩から略奪した年上彼氏ののろけ話ばかりし続けるのである。自分は他人の幸せそうな様子を聞いて不機嫌になるほど心の狭い人間ではないと思っているが、朝から晩までずっと彼氏の話をされ続けると正直うんざりしてしまう。ディズニーランドは待ち時間も長く、ずっと二人で行動しているため逃げ場がない。しかもその日はお泊り会をしたのだが、朝起きてからチェックアウトぎりぎりまで彼氏と電話している。久しぶりに会う友達よりも彼氏のほうがいいのね…とまだこの手の女の子に慣れていなかったわたしは悲しくなってしまった。それでもって帰りの特急までにほんとは原宿とか見たかった!と後から言われたが、彼氏と電話してなかったら余裕だったよ…と言うのはやめておいた。

 

②大一の秋、友達のお誕生日に合わせて高校同期会をやることに決定。わたしはおしゃれなレストランのアフタヌーンティーを予約し、サプライズのバースデープレートまで用意していたのだ。そして直前になり、「彼氏がサプライズで当日のディズニーランドのチケットをプレゼントしてくれたので同期会には行かない」との連絡を受け、キャンセルの電話をお店にいれたあたりからこっち、感情がない。友人のお誕生日当日、彼氏と制服ディズニーしてるストーリーを見て、虚無感を覚えた。そうだよね、彼氏と行くお誕生日ディズニーのほうが、高校同期の集まりよりも楽しいよな。これ以来先約ある友人よりも彼氏を優先する女の子がややトラウマであり、自分は絶対に先約優先であろうと固く決意している。彼氏を優先するのは人の勝手だが、あなたがキャンセルしたイベントのためにいろいろ準備したりその日を楽しみにしている友達がいることを忘れてはいけない。妹には何らかのイベントを主催するのはガチ面倒だからやめとけ、と遺言を残してある。

 

③これもまた大一の秋、高校の友人のディズニーに行ったのだが、おはようの挨拶のあと、彼女が挙動不審である。どうやら1週間前に彼氏ができたらしい。①と同じパターンである。わざわざ付き合い始める瞬間の様子などを解説してもらった。彼氏へのお土産も一緒に選んだ。ダッフィーの小さいぬいぐるみのストラップにした。友人はシェリーメイのストラップを買って、お揃いにしたのを喜んでいた。高校時代はまだ私にも恋人がいたので毒を以て毒を制す、のろけにはのろけで返すという必殺技が使えたのだが、この時は普通に独身なのでこの作戦は使えない。しかも謎の憐みの目で見られる。勘弁してくれ。一日中新しい彼氏の話を聞かされて疲労困憊である。彼氏がくれたとかいう香水を何度も手首につけるから、近寄ると匂いが濃ゆい…

 

④これは結構最近の話だけど、お友達がディズニーに行きたいというお話を振ってきたので、じゃあ一緒に行く?と提案するも「あなたじゃくて彼氏と行きたいから」とあえなく却下。楽しんでいってきてくれ、アデュー…わたしは富士急に行ってるからさ。ここまでくるとほんとうに彼氏が好きなんだなぁ…という感心の域である。

 

もう、わたしのまわりだけこのタイプの女の子が多いのか、女の子とはこういう生き物で彼氏しか見えないのが普通なのか、わたしがおかしいのか、お人好しだからなめられているのかよく分からない。わたしは先約優先で生きているが、まわりはそんなポリシーを持っていないので、わたしだけ友人の都合に忠実な人間みたいになっている。幸せになるには、やっぱり友情よりも愛情なの?どっちも同じくらいわたしには大事なんだけどね。幸せは暴力だ。