夜間飛行

丸をください

青鬼に媚びる

「青鬼の褌を洗う女」という小説がある。主人公のサチコちゃんはにっこり媚びるのが得意な人だ。うろ覚えだがもし自分のもとに来た鬼が男だったら私は精一杯媚びて媚びながら死にたい、とか言っていた気がする。ここまで徹底している媚びはもはや脱帽ものである。

 

私は媚びを売る女性が大嫌いなのだが、最近自分が特定の人々に媚びた話し方をしていることに気が付いて自己嫌悪に陥っている。己の中にデフォルトで入っている悪い意味での女っぽさが無意識に出てきていることに心底恐怖を覚える。自分の認識として所謂「女らしさ」は意識して出したりひっこめたりできるものだと考えている。短いスカートだとか華やかな化粧みたいな、記号的なものを身につけなければ「女らしさ」は出ないものだと思っているので知らず知らずのうちに媚びた話し方という形で己の女の側面が露呈してしまっているのが嫌で仕方がない。気色が悪い。無意識のうちに自分の女性性を押し出そうとしているのがあさましい感じがする。

 

「~でしょう?」「~ね」「~かしら」「~よ」みたいな調子で話したり書いたりしている自覚はある。これは自分で分かっていてやっていることなので問題ない。これだけで媚びていることにはならない。問題は声のトーンである。普段のテンションよりも高く、甘く、若干語尾を上げて伸ばす話し方。文字に起こすと「明日は晴れるかしらぁ⤴」「あなたもそう思うでしょぉ~⤴?」みたいな感じ。きも過ぎて泣きたい。「~かしら」みたいな女言葉は私にとってミニスカートやハイヒールのようなもの、一種の演出であって、無意識に生の女らしさを表現するものではない。しかし無意識の甘くて高い声は自分でも自覚していなかった生々しい女の部分がむき出しになってしまっているので嫌なのだ。もっというと無意識にそんな声を、自身の女っぽさを利用しようとしている自分がたまらなく気持ち悪いのだ。

 

私はこの期に及んで自分が何をしようとしているのかが分からない。なんでこの記事を書いているのかも分からない。とりあえず媚びた話し方をしているのは絶対に嫌なのだ。男性に、年上に媚びてるのが何としても受け入れがたい。自分の中に媚びて、それによって女として見られたい?愛されたい?ような心があるのではないか?ということが許しがたい。そんなことしたって何にもならないのに。

 

この思考が若干ミソジニー味を帯びているものなんとも耐え難い。私はどうすればいいのだろう。助けてくれ。